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第23話 夜の王子は、昼の不在を埋めるみたいに笑う

last update publish date: 2026-08-28 19:00:10

 駅から家までの道を、久瀬湊人はほとんど駆け足で進んでいた。

 休日の昼下がり。商店街には買い物帰りの人がいて、子ども連れがいて、どこかの店先から揚げ物の匂いが流れてくる。少し前まで、自分もその“休日の側”にいたはずなのに、今はもう別の時間へ移動している感覚がある。

 カラオケの余韻はまだ身体に残っていた。

 部屋の少し乾いた空気。

 すばるの騒がしさ。

 日野の軽口。

 真白の、呆れたようでいて機嫌の悪くない声。

 紬希の「また、一緒に歌えたらいいな」という、あの静かな一言。

 どれも、妙に鮮明だ。

 それだけ鮮明なのに、時計は待ってくれない。

 十五時から打ち合わせ。

 帰宅、着替え、機材チェック、資料確認。

 途中までしかいられなかった後ろめたさに浸っている暇はない。

 マンションの階段を上がりながら、湊人は小さく息を吐く。

「&hellip
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